今から130年ほど前にパーマーさんが偶然に発見した、カイロの実から採れたカイロジュースという健康飲料があります。
パーマーさんはカイロジュースを果汁100%として売り出しました。パーマーさんはカイロジュースは「カイロの実」を搾っただけだから、果汁は100%だと思っていたのです。しかし、実際のカイロジュースの果汁は30%ほどしかありませんでした。カイロの実から純粋な液を抽出することは(今でも)難しかったため、果汁100%にならなかったのです。
ただ、カイロジュースは「健康に効果的」という噂も広がってヒットしました。そこで、より多くの人々にも飲んでもらえるようにと、パーマーさんはカイロジュースの製造と販売権を多数の業者に売りました。
すると製造と販売権を得た業者は、
カイロジュースと別のジュースを混ぜたり、
防腐剤やビタミン剤を加えたり、
味と色を似せただけの無果汁のカイロジュースを作ったり、
遺伝子組み換えをしたり、
別会社に製造を委託したり、
彼ら独自のカイロジュースを販売し始めました。
理由は
より健康促進のため、
消費期限を延ばすため、
大量販売を可能にするため、
利益を伸ばすため、
など様々です。
しかし、ただでさえ元が果汁30%なのに、改悪されたカイロジュースが大量に出回ってしまったため、何が正しく何が間違いなのか、誰もわからなくなってしまいました。
一方、消費者の反応は賛否両論でした。
カイロジュースの値段が下がって買いやすくなった!
消費期限が伸びて便利になった!
病気に効果あり!
と好意的に捉える人がいる一方で、
味が良くない!
噂ほど健康によい飲み物でない!
飲んだんけど何の効果もなかった!
カイロジュースを飲んで逆に体調が悪くなった!
と否定的な意見も出てきました。
カイロジュース協会は、このようなネガティブ意見で消費者離れすることを危惧して、政府と医学会にカイロジュースを健康飲料として公的に認めてもらえるよう懇願しました。それは認められ、カイロジュースは健康飲料として公的な認定書を与えられました。
これで人々はカイロジュースを疑うことはなくなり、健康飲料として(盲目的に)信頼するようになりました。
そんな政治的な動きの中、まじめに取り組んでいる人もいました。それがパーマーさんの跡を継いだ2代目パーマーさんです。
2代目パーマーさんは工場に科学的な設備を取り入れ、熱心に取り組み、ついに果汁のパーセンテージを引き上げることに成功しました。そして2代目パーマーさんは、このリニューアルしたカイロジュースⅡを果汁100%として売り出し、世界的に好評を得ました。
カイロジュース誕生から130年が経った!
今、カイロジュース誕生から130年の月日が経ちました。カイロジュースの産みの親であるパーマーさんも、カイロジュースを進化させた2代目パーマーもこの世にいません。
私は幼い頃からカイロジュースを色々飲んできて、その優れた効果を肌で実感していました。ただ、ずっとカイロジュースに対して心のモヤモヤが残っていました。それは2代目パーマーさんが作った、最も優れていると評判のカイロジュースⅡを飲んでも変わりませんでした。
そんなある日、偶然にも果汁100%の本物のカイロジュースを飲むことができました。私は飲んだ瞬間、これこそ本物だとすぐに分かりました。いつも心にあったモヤモヤが消えたのです。これは言葉や論理でなく直感的にです。
ただそれと同時に、今まで飲んできたカイロジュースとのあまりの違いに愕然としました。
私は思いました。
今まで飲んできたカイロジュースって何だったんだ?
このカイロジュースとは月とスッポンじゃないか!
ダビンチの絵と小学生の絵ぐらい違うぞ!
それほど差があったのです。
そこで、最も優れているとされるカイロジュースⅡの成分を分析してみると、実際の果汁は60%ほどしかありませんでした。実は科学的に取り組んだといっても分析不能の部分があり、そこを2代目パーマーさんは推測で上手くできていると思い込んでいたのです。
そして私は考えました。
確かに果汁30%から60%に引き上げたカイロジュースⅡは、進歩したジュースなのは間違いない。しかし果汁60%なのに、なぜ果汁100%として売っているんだ?
「果汁60%なら60%と明記しないといけない。もし果汁100%と明記するなら、果汁が100%であることを証明すべきだ」
すると業者は、あの研究熱心で天才のパーマーさんがカイロジュースⅡの果汁は100%と記載しているので、果汁100%なんだと言います。さらにカイロジュースは国や医学会から健康飲料として認定されている。君はカイロジュースのブランドをただ傷つけようと誹謗中傷していると言います。
彼らは消費者を騙しているし、果汁100%に近づけようと努力している生産者を阻害しているのです。なぜなら果汁60%は果汁100%より、はるかに低価格で販売できるからです。
2つとも果汁100%と明記しているのに、
一方が1万円、もう一方が100万円なら、
100万円のカイロジュースが売れるわけないのです。
私は何でこんな業界になったのか?
何が問題だったのか?
なぜ正しく導けなかったのか?
カイロジュースの歴史を振り返ってみました。
まず証明もないのにパーマーさんが安易に果汁100%と明記したのが問題でした。
さらに規制や罰則なく不特定多数の業者に製造と販売の権利を売ったことが問題でした。
そしてパーマーさんを神として崇める人達に問題がありました。
確かに初代パーマーさんはカイロジュースの発明者で2代目パーマーさんは進歩させたから、カイロジュース界の偉人です。
しかしカイロジュースを求める消費者や果汁100%を目指す者にとって、パーマーさんの考えや組織形体はもはや害になっているのです。
そこで私は結論を述べました。
パーマー親子は偉大だが、カイロジュース界から追放すべきであると。